刺身にすると甘みがすっと立ち、しゃぶしゃぶでは身がきゅっと締まり、塩焼きでは殻の香ばしさまで楽しめる。姫島の車えびは、晴れの日の食卓にも、贈り物にも選ばれてきた島の看板食材です。ただ、姫島の車えびを知るおもしろさは、味だけではありません。小さな島の産業として、長い時間をかけて育てられてきた背景があります。
姫島車えびには、塩田跡地を利用して育てる養殖物と、姫島近海で獲れる天然物があります。離島の食材は、海が近いというだけで生まれるものではありません。土地の使い方を変え、技術を積み重ね、島の仕事として続けてきた人たちがいて、ようやく食卓に届きます。
塩田跡地から、島の看板食材へ
車えび養殖が姫島らしいのは、塩田跡地を活用しているところです。塩をつくっていた土地が、時代の変化の中で車えびを育てる池になり、島を代表する産業のひとつになっていく。食材の背景には、そんな土地の記憶も重なっています。
養殖池は姫島村の中央部、西部、東部に3か所、15面あります。総面積は383,300平方メートル。数字だけで見ると少し遠く感じますが、島の中に広がる池で、毎日の餌やりや海水の管理が続けられていると考えると、一尾の車えびにかかる手間が見えてきます。
おいしさは、池の一年から始まる
車えびは、池に入れたら自然に大きくなるわけではありません。姫島車えび養殖の養殖サイクルでは、1月から4月は池の清掃期。4月初旬に卵を持った車えびを孵化タンクに入れ、5月初旬には育成用の養殖池へ放養します。その後、餌やりや海水の交換などの管理を続け、7月中旬から間引き出荷が始まり、翌年1月頃に集荷がほぼ終わる流れです。
この流れを知ると、車えびの見え方が少し変わります。皿の上では一瞬で食べてしまう一尾も、実際には池を整える時間、育てる時間、出荷を見極める時間の積み重ねです。大きさや見た目だけでは見えない、島の仕事の密度があります。
刺身、しゃぶしゃぶ、塩焼き。食べ方で表情が変わる
姫島の活〆車えびは、家庭でもいくつかの食べ方で楽しめます。刺身なら、まず甘みと食感をまっすぐ味わえます。殻をむいた身に、少しだけ醤油をつける。強い味を重ねすぎないほうが、車えびそのものの甘みがわかりやすくなります。
しゃぶしゃぶは、火を通しすぎないのがよいところです。湯にくぐらせると身が白く変わり、ぷりっとした歯ごたえが出ます。塩焼きは、殻ごと焼く香ばしさが魅力です。頭の部分まで丁寧に焼けば、皿の上に香ばしさと迫力が出ます。
島の逸品SHOPで扱う冷凍の活〆車えびは、解凍後に生食で楽しめる商品です。刺身、しゃぶしゃぶ、塩焼きに使えるため、贈り物にも、家族が集まる日の一皿にも選びやすい食材です。
姫島では、祭りや旅の味にもなる
姫島では、車えびはお取り寄せ商品である前に、島を訪れた人が味わう名物でもあります。毎年10月下旬には姫島港フェリー広場で「姫島車えび祭」が開かれ、刺身、フライ、煮付けなどを楽しめる賞味会や、海産物の販売、キツネ踊り・アヤ踊りの鑑賞でにぎわいます。
食べるだけで終わらず、港に人が集まり、踊りがあり、海産物の出店が並ぶ。車えびは、島の外へ届けられる商品でありながら、島に人を呼ぶきっかけにもなっています。ひとつの食材が、産業と観光と文化をゆるやかにつないでいるところに、姫島らしさがあります。
たこ、ひじき、車えび。島の味はひとつではない
離島だよりでは、これまで姫島のひじき、たこめし、盆踊りを紹介してきました。ひじきは冬の海のやわらかな芽、たこめしは日々の食卓に近い海の旨み、盆踊りは人が帰り集まる夏の文化です。そこに車えびを並べると、姫島の食文化の幅が見えてきます。
車えびは、特別な日の食材です。けれど、特別なものだけを島の魅力として切り取るのではなく、日常のひじきやたこ、祭りの日の食卓と一緒に見ていくと、島の暮らしが立体的になります。何を食べるかは、どんな土地を知るかでもあります。
姫島の車えび関連商品
活〆車えび、車えびかりんとう、車えび粉末など、販売中の姫島の車えび商品をまとめて見られます。
一尾を味わうことは、島の仕事を知ること
車えびは、食卓にのると場が華やぎます。けれど、その華やかさの手前には、池を整え、稚えびを育て、海水を管理し、出荷の時期を見極める仕事があります。おいしいという感想の奥に、島で続いてきた仕事がある。そこまで想像できると、姫島の車えびは一尾の向こうに島の時間まで見える食材になります。
刺身で甘みを味わう。しゃぶしゃぶで食感を楽しむ。塩焼きで香ばしさまで食べる。どの食べ方でも、姫島の海と人の手が少しずつ伝わってきます。離島の逸品を選ぶ楽しさは、味だけでなく、背景まで一緒に受け取れるところにあります。